とある経営系大学教員の頭の整理ブログ

経営系大学教員のTIPs・講義系の記事を整理するブログです。ただし、それにこだわらず色々なものの整理に利用しようと考えています。

レポートの考え方・作り方

■はじめに
 みなさんは授業で「レポートを書きなさい」との課題が出た場合、どのように対応していますか。藪から棒な対応では、レポート作成に時間がかかるうえに結局”何が言いたいのかよくわからない”レポートが出来上がってしまいます。しかも、それが提出期限前だったりすると、徹夜で頑張るか、諦めてそのまま提出するか、、、せっかく時間を使って頑張ったのに思ったような評価もなく残念な結果に終わってしまいます(私もそうでしたが)。
 このような状況を回避するための指南をここに記載することにします。ぜひ参考にしてください。この指南はどのようなポジションにいる人にも応用可能な普遍的なものです。ぜひ大学生のうちにスキルを磨いてみてくださいね。

■「レポートを求められたとき」の指南
 ①  何を求められているのかきちんと把握しましょう
 ② レポート出題者と期待値をすり合わせましょう

 まず①について、どのようなレポートを求められているのか出題内容を自分の頭できちんと整理しなければ、行き当たりばったりでレポートを作ってしまうことになります。この前提がないと、提出したレポートが期待値外れのシロモノとなってしまう可能性大です。基本的なことですが、出題文や作成条件などをよく読み、何を求められているのかきちんと理解しましょう。
 次に②です。出題文や作成条件を読んでも「?」に思うことが結構あると思います。そういう時は「?」なことをそのままにしておかず出題者にどんどん質問しましょう。出題者も「そういう観点は抜けてたな」ということも多いです。積極的に聞くを心掛けましょう。

■「レポート作成の事前準備」の指南
 ③ やるべきタスクを整理しましょう
 ④ タスクをスケジュール化しましょう

 ③について、出題意図などが把握できたら、レポートを作成するにあたって必要なタスクを洗い出しましょう。例えば、「XX企業の戦略について調査」とのお題であれば、どういうタスクが考えられますか?①「XX企業はどういう会社か(歴史・事業内容・財務内容・売上状況など)」、②「XX企業が所属する市場を調査(市場規模、その特徴、市場でのポジション、競合企業など)」、③「XX企業の戦略を調査(SWOT、VRIO、マーケティングなど)」、、と出てくると思います。こういった調べなければいけないタスクを洗い出し、整理しておくことで、レポートの品質が向上することになります。
 最後に④です。基本的なことですが、③で整理したタスクを課題の提出期限から逆算してスケジューリングしましょう。そうすることで何をいつまでに整理すべきなのか明確にすることができます。グループワークする場合は、グループメンバーと必ず共有しましょう。そうしなければ、タスクの待ち時間などが発生し、思うようにワーキングできません。”当たり前のこと”ですが、当たり前にできる人は意外と少ないです。


■「レポート作成の開始時」の指南
 ⑤ ストーリーラインを考えましょう
 ⑥ ストーリーがピラミッドになっているか考えましょう
 ⑦ Wordファイルのレイアウトを考えましょう

 ⑤について、「ストーリーライン」とは言葉そのまま”話の流れ”のことです。もしかしてと思いますが、④で整理したタスクが終わったらいきなり文章を書き始めていませんか?こちらも危険な行為で、レポートの流れが「あっちに行ったり、こっちに行ったり、、」とフラフラしてしまいやはり何を言いたいのかわからないレポートができてしまいます。せっかく色々と調べたのに努力が実を結ばない結末となってしまいがちです。
 具体的に「ストーリーライン」は以下のように考えます。レポート・論文などは、「序論」⇒「本論」⇒「結論」の流れが基本です。起承転結でメリハリあるレポートを作りましょう。ストーリーラインのイメージは下段「スライドの考え方・作り方」も参考にしてください。


 【ストーリーライン】
  1.序論:このレポートを書く理由、つまり問題提起(目的・背景)をしっかりと記載しましょう。
   ⇒ ある企業の戦略を調べるのであれば、この企業を対象とした目的は何か、どのような背景があるのか、どのような課題・問題があるのか、どのような方法で調査するのかなどを記載します。
   2.   本論:序論の目的・背景・方法に則って調べたこと、調べた結果わかったことを記載しましょう。
   ⇒ 実際にその企業の戦略(調べた事例)を記載していきます。いきなり戦略を書くのではなく、こういった市場のどういうポジションにいてどんな戦略を取っているのかなどを記載し、ロジカルに文章を構成します。
    そのうえで調べっぱなしにするのではなく、競合企業の分析などを加え、企業間の比較から言えることなど自分の考察を加えましょう(大事)。
   3.   結論:本論までの内容を整理し、最終的にわかった結論などを記載しましょう。
   ⇒ 結論では本論まででわかったこと、発見したことなどに加えて、今回の分析手法に対する課題や、今後に向けての課題・期待点なども記載するとよいでしょう。


 ⑥について、ストーリーがピラミッド構造になっているか考えましょう。ストーリーラインがピラミッドではありません。ストーリーをピラミッド構造、つまりストーリーの各メッセージとその根拠が「why so(それはなぜ?)」「so what(だから何?)」の関係性になっているか確認するということです。これらの関係がMECE(漏れなくダブりなく)になっていることで、レポートで主張したいことの説得力が増します(現時点で記載が薄いですが、一番大事だといっても過言ではない点です)。

 ※ピラミッド構造は「「ピラミッドストラクチャー」で主張の説得力を増す:日経ビジネス電子版 (nikkei.com) 」などを参照
 ※MECEMutually Exclusive, Collectively Exhaustive

 ⑦について、Wordファイルそのもののレイアウトを考えましょう。ストーリーラインに基づき、序論・本論・結論をWordに記載するためのレイアウトを考えるということです。一般的にレポートであれば、以下のレイアウトになるでしょう。

 1.タイトルページ:課題のタイトル、所属・学籍番号・氏名などを記載(授業レポートでは求められないことが多いです)
 2.本文ページ:序論~結論を記載。余白を設定し、ヘッダーに授業名や提出日など、フッターにページ数を記載するのは基本でしょう。また、章タイトルの文字ポイント数、ビュレット構成なども統一しておきます。注釈も脚注、後注を決めておきましょう。
 3.参考文献ページ:こちらも忘れずに必要です。文献の記載方法は学会によって異なるケースが多いですが、以下のようなページを参考にしてみてください。
   経営情報学会:論文投稿 | 一般社団法人 経営情報学会(JASMIN)
   研究・イノベーション学会:一般社団法人 研究・イノベーション学会 | 投稿規定・原稿執筆要領 (jsrpim.jp) 


■「レポート作成完了時」の指南
 ⑧ レビューしましょう
 ⑨ 提出条件を確認しましょう

 ⑧について、レビューは必ず行ってください。まずは大きなストーリーの流れに違和感がないかチェックしましょう。違和感があればロジックがおかしい点がないか、エビデンスに誤りはないかなどチェックしましょう。次に細かな誤字・脱字はもちろん、特にWordの校正機能で線が引かれているものなどは必ず確認しましょう。「など」「等」など、”漢字”か”ひらがな”がぶれないようレポート中で「言葉」が統一できているかも合わせてチェックが必要です。もし可能であるなら友人などにダブルチェックしてもらうようにしましょう。

 最後に⑨です。意外と大事です。例えば、提出方法に条件があったり、ファイルの名前が指定されているようなケースがあります。「そんな細かいところまで」と思うかもしれませんが、ファイル名チェックではじかれて中身を見てもらえないケースなどあったり、減点対象条件になったりしているかもしれません。最後の最後まで気を抜かないようにしてくださいね。

■参考
 バーバラ・ミント,『新版 考える技術・書く技術 問題解決力を伸ばすピラミッド原則』, ダイヤモンド社, 1999
 山崎康司, 『入門 考える技術・書く技術――日本人のロジカルシンキング実践法』.ダイヤモンド社, 2011

以上