【感想】バンコク探訪
長らく更新がストップしていました。何とか細々でも続けたいとは思ってます💦

さて、昨夏になってしまいましたが、バンコク出張してきました。目的は現地企業に訪問してのインタビュー調査になります。学生も勉強になるかなとスタディツアーも組んでみました。果たして学生は参加するだろうかと思ってましたが、社会人院生を含め7名の参加となりました。ぜひ色々なことに挑戦する気持ちを忘れないでほしいところです。
現地ではタイワコール様にインタビュー調査させていただきました。もちろん、ここで内容を表すことはできませんが、1970年にワコールとタイ財閥であるサハグループとの合弁がスタートで、今はタイ株式市場に上場している会社です。日泰の文化が絶妙なバランスでミックスされてるなとの印象を持ちました。

ここでは、隣接するバンコク工場まで見学させていただき、本当に感謝です。学生も原材料の入荷から縫製、品質管理とのプロセスを興味深くみていたのは印象的でした。経営学の理論と実践の往還を体感できたのかなと思います。

この他にもタイJR九州ビジネスディベロップメント様、ソラリア西鉄ホテルバンコク様と現地不動産の見学をさせていただき、3社巡ることができました。ご尽力いただいた皆さまには本当に感謝してます。

今後も日系の企業を中心としつつ、海外企業の意思決定の現場を探究できればと思っています。

しかし、久しぶりのバンコクでしたが、相変わらずの活気を感じました。経済的には苦労してる部分もあるようですが、日本にいると感じられないパッションがありますね。街も新旧混在でカオティックですが、鉄道網の発展は著しく、便利になっています。今後も期待したいところです。
今回はアソーク近くのシャーマレイクビューに泊まりましたが、なかなか良いコンドミニアムでした。近くにベンジャキティ公園という大きな公園もあり、環境は良かったです。公園に普通にオオトカゲがいるのにも驚きました。笑 しかしながら、道路渋滞はすごいです。今回友人と車で夕食に繰り出した際、スコールに見舞われたのですが、雨が降ったら車はまず動かないと思った方がいいかもしれません。またナイトマーケットも道路も川になるので、オフィシャルでない限りはサンダルが便利かもと思った次第でした。


とは言え、魅力的な東南アジアのメガシティであることは間違いなく、また訪問したいところです。
以上
【感想】国際会議IIAI AAI 2025で研究発表しました
先月の7月中旬、国際会議「IIAI AAI 2025 – 18th International Congress on Advanced Applied Informatics」に参加し、研究発表を行ってきました。初めての参加だったため、備忘の意味も込めて、当日の体験や感想をお伝えしたいと思います。
そもそもIIAIとは、「International Institute of Applied Informatics」の略称で、日本を拠点にしている団体です。この団体は情報科学から経済・経営に至るまで、幅広い分野を対象としており、年に二回(夏と冬)の国際会議を開催しています。今回参加した夏の会議は、日本で実施され、冬の会議は海外、特に東南アジア諸国で開催されることが多いようです。夏の会議は規模が大きいとのことで、期待が高まります。

会議は北九州市の北九州国際会議場でした。小倉駅の新幹線口から徒歩10分ほどの便利な場所に位置しており、隣にはお気に入りのミクニスタジアム(ミクスタ)もあります(いつかこのスタジアムでサッカー観戦してみたい)。実はここでの会議は今回が初めてではないようです。というのも、北九州市はMICE誘致に積極的らしく、色々と利便性が高いようですね。確かに小倉駅にはIIAIの垂れ幕があったり、エクスカーションの手配等々、開催側視点でも色々と助かっている面が多いように見えました。

今回の発表タイトルは「A study on organizational decision-making from the perspective of uncertainty and ambiguity – A Multi-Agent Simulation model」。最近の不安定な社会状況を反映し、組織の意思決定に関するシミュレーションモデルを構築しました。具体的には、①あいまいな状況、つまり事柄の解釈が多様で意思決定が難しい場合、②不確実な状況、つまり未来の見通しが困難で予測するのが難しい場合の2つの条件を変えてシミュレーションを行いました。
その結果、シミュレーション上で意思決定が最も難しくなるのは、意外にもあいまい性と不確実性の双方が高い条件ではなく、あいまい性が高く、不確実性は低い条件であることがわかりました。この結果は驚きでしたが、「未来が見通せない」という不確実性よりも「組織内部の目標や基準があいまいであること」が意思決定の効率を著しく妨げる要因であることが示唆されます。環境に応じた意思決定プロセスの設計がいかに重要か、改めて考えさせられる結果となりました。ただし、あくまでシミュレーションの結果であるため、今後は現実の組織で調査したいと考えています。
この発表に関しては論文も出版予定ですので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。なお、「6th International Conference on Decision Science, Theory and Management (DSTM 2025)」内での報告となりました。
さて、会議では研究者同士の交流を促進するために、さまざまなイベントが企画されていました。仕事や事情があって、残念ながら全てのイベントには参加できなかったものの、唯一参加したバンケットは本当に素晴らしいものでした。会場は北九州市内にある高見神社で、まるでお祭りのような雰囲気に包まれていました。

何とやぐらや提灯、屋台が立ち並び、途中からは盆踊りの時間も設けられるなど、お祭りそのものです!



鹿児島からの参加者は少ないだろうと思っていたのですが、意外にも鹿児島市や都城市からの先生方がいらっしゃり、懇親を深めることができたのがとても嬉しかったですね。このような普段なかなか広がりにくいネットワークを築く機会は、大変貴重です。また、会議セッションでも色々な人とコミュニケーションを取ることができ、これまたよい機会でした。特に社会人個人で研究発表されている方もおり、大変勇気づけられます。
次回の冬季会議は海外で実施されるようですが、機会があればぜひ再チャレンジしてみたいと思っています。今回の経験は、今後の研究活動にも大いに役立てていきたいです。
以上
【感想】3Questions 九州・沖縄地区編に参加してきました
先日6/24に3Questions 九州・沖縄地区編に参加してきました。
場所は熊本大学工学部百周年記念館でした。何気に初の熊本大学訪問でした。
3Questions 九州・沖縄地区
正直僕はこの取り組みを事務局様からのメールが来るまで全く知らなかったのですが、企画意図を聞いて、純粋に「面白そう」と参加を即決しました。この取り組みは通常の学会とは違い、学際的な研究ポスター発表大会で、研究者の持つ問いを「みなに問いかけたいわたしのメッセージ」「わたしが追っている不思議」「これまでやってきたこと、やろうとしていること」として、それぞれ300字程度の文章のみで説明するもので、これが1トピック1枚のポスターになります。
※おまけに研究者側でポスター印刷は不要

そのポスターを会場に貼り出し、来場者はポストイットを使って、気になるポスターにペタペタとコメントを貼っていくというものです。こういった発表会には参加したことなかったのでかなり新鮮でした。やはり、他分野・他領域の方はもちろん、一般の方に自分の研究内容を話せる機会というのは滅多にないので、オーディエンスからどういった反応がもらえるのかが期待50%・不安50%という感じで、楽しみでした。
僕の専門とする経営学は広く社会科学に分類されます。いわゆる自然科学は実験だろうが理論だろうが、誰が同じことをやっても同じ結果が返ってくる、そこで評価がなされるわけですが、僕の経営学は自然科学とは違って社会科学です。
社会科学は自然科学のような「回答はコレだ!(念のためですが、理系出身なのでそうじゃない場合もあることは理解しています)」とある程度一意に決まるものではなく、どちらかというとロジックとして成り立っているかという部分で評価が決まってくる分野です。つまり、極端な言い方をすればロジックが一般に広く受け入れられるか否かだと考えています。それゆえ、反応を見るのが、ある意味で試金石かなと思っていたわけです。
3Questions自体は6/21(土)スタートだったわけですが、僕の発表した6/24(火)は4日目にあたります。僕のポスターはどうなっていたかというと・・・。
お?

おお!

おおおおー!

何と、こんなにもたくさんのポストイットで埋め尽くされていました!これはある意味で研究者冥利につきます。研究のヒントになりそうなコメントもあり、これまた感動してしまいました。
「組織はなぜ自滅する意思決定を行ってしまうのか」とのタイトルでの発表でしたが、多くの方に興味を持っていただき、嬉しさ反面、身が引き締まる思いもしました。
これからもしっかり研究せねば。期間中は460名もの来場があったようです。
参加してよかったと思います。
また当日はグループセッションにも参加し、「研究者を憧れの職業No.1にするには?」とのお題もディスカッションさせていただきました。こちらも他の先生方の考えや経験を聞くことができ、なかなか刺激的な場でしたね。
また今後もこういったユニークな取り組みがあれば参加してみたいと思います。
以上
【感想】スタートアップワールドカップ KYUSHU REGIONALを見学してきました
先日5/23に熊本城ホールで開催されたペガサス社主催のスタートアップワールドカップ九州予選を見学してきました!

今までビジネススクールなどに通ってきたもののあまりスタートアップ、ベンチャー企業とは深く関わることなく過ごしてきてました。しかし、研究を進めるにつれ、あいまいや不確実な状況での組織の意思決定こそ興味深いダイナミズムが見られ、特にこれらの企業では比較的観察しやすいのではないかと考えるようになってきてました。・・・とは言え、大企業であってもよくよくクローズアップすれば観察できるとは考えている。
ともかく興味が湧いてきていると。そこでこのイベントに参加すれば、色々な企業の声を直接聞けるのではと期待したわけですが、大正解でした。

ピッチ参加の企業は11社。ここからサンフランシスコ開催の最終ピッチに進める企業が決まります。なお、今回は熊本発スタートアップであるトイメディカル社が最終ピッチ進出を決めました。同社は大学との共同研究で塩分を吸着する食物繊維を開発し、減塩ではなく食事から摂った塩分を排塩する、つまり、塩分を気にせず食事の味を変えることなく塩分コントロールができるというサプリメントを開発するなど、今後ますます注目されるであろう市場にインパクトを与えそうな点が評価されたようでした。ピッチ後の審査員の注目度も僕が見る限りでは最も高く、選出の納得感は高かったですね。
またピッチ参加企業以外にも多くのスタートアップがブースを出していて、トータル20社くらいが顔を揃えていたように思います。
ありがたいことに、そこでスタートアップ各社から組織の意思決定に関するお話を聞くことができました。本来は営業メインのはずなのに僕に色々な話をしていただいたみなさまには本当に感謝しています。
aiESG社、ACCELStars社、SmartProcess社、AnotherWorks社、Coatoile社、カスタメディア社などからお話を聞くことができました。大変ありがたいことです。今後の研究のヒントになるようなタネをたくさんいただくことができ、参加目的も達成できました。
またこのイベントは実業家やVCなど有名人のトークイベントも開催され、堀江さんや田村淳さん、熊本市の大西市長、京大の山田先生、一橋大の米倉先生などなど、刺激的な話を聞けたのも収穫でした。一緒に参加したゼミ生もいたのですが、随分と刺激があったみたいです。




やはり商業化しているところもあって誰が行っても楽しめるイベントになってるんだなと思いました。イベントそのものの運営や企画、それこそ今後の戦略も気になりますね。
何にせよ、いい時間を過ごすことができました。また機会があれば参加してみたいと思います。
以上
科研費一考 ~研究活動スタート支援⑤~
では、最後の5回目です。
前回からかなり間が空いてしまいましたが、なんと基盤Cも採択されました!
年度内に科研費を2件も採択いただけるとは…本当にありがたい限りです。
基盤Cについても、気が向いたらまた書いてみようと思います。
※書類を公開するのがわかりやすいのでしょうが、恥ずかしいのでご理解くださいね。
ちなみに、研スタの採択連絡は7月末、基盤B・Cの採択連絡は2月末です。
この日は毎回ドキドキですね。
今回は1章の4節以下から解説していきたいと思います。
最初に章構成を振り返っておきます。
- 研究目的、研究方法など:3ページ以内
1) 本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」
2) 本研究の目的及び学術的独自性と創造性
3) 本研究の着想に至った経緯や、関連する国内外の研究動向と本研究の位置づけ
↓ 今回は以下からスタート
4) 本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか
5) 本研究の目的を達成するための準備状況 - 応募者の研究遂行能力及び研究環境:2ページ以内
1) これまでの研究活動
2) 研究環境(研究遂行に必要な研究施設・設備・研究資料等を含む) - 人権の保護及び法令等の遵守への対応:1ページ以内
このように、大きく3章に分かれています。
前回までに、最も重要と考える第1章の第3節まで解説しましたので、そちらも参考にしてください。また、一番最後の「人権の保護及び法令等の遵守への対応」については、基本的に記載すべき事項が限られると考えられるため、今回は触れません。
前回の記事で書いたように、第1章は第1~3項で起承転結を構成すると述べましたが、今回扱う第4~5項はその続きであり、いわば第2巻に当たるイメージです。
第1~3項と同様に、第4~5項でも起承転結を構成する。つまり、第1章は2巻構成ということですね。
■本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか
さて、前項の続きとして書いていきます。わずか2ページの短い企画書ですが、中身は濃く、2巻にわたるストーリーを展開することになります。その2巻目の大半を占めるのが、まさにこの部分です。
前項までの研究ストーリーを踏まえ、具体的な研究計画へと落とし込んでいきます。文量としては800字程度、原稿用紙2枚分ほどで、私は申請課題をどのような観点から分析する予定なのか、観点ごとに研究計画を明示しました。
もう少し具体的に書くと、私の研究は「組織の意思決定プロセスの解明」がメインテーマになります。このテーマに対し、理論面(シミュレーションモデルの構築)と実践面(質問票調査による分析)の両面からどのようにアプローチするのかを展開しました。2巻構成で考えれば、起承転結の「起承転」までを記載するイメージです。
私自身のこれまでの研究成果から明らかになったことは「ここまで」、未解決課題は「こういう点」、それを踏まえて今回は「こういう点をグレードアップして未解決課題に迫る」といった形で、観点ごとに計画を整理しました。
■本研究の目的を達成するための準備状況
そして、最後の「結」です。
ここでは、前項「本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか」を踏まえ、「現時点でここまで準備できている」ということを終わりの言葉として記載します。
「シミュレーションや質問票調査を計画しているが、本当にその研究を遂行する能力はあるのか?」という審査員の疑問に答える項目と捉え、これまでの研究経験、つまり準備状況を記載しました。
「ここまで経験のある私を信じてください」と、審査員を安心させることが大切です。
これが、第1章「研究目的、研究方法など」に記載する内容だと考え書類を作成しました。
■参考文献
「参考文献の記載をどうすべきか」という議論もあるようですが、私はきっちり記載しました。もちろん、自分自身の業績は第2章で記載するので、それ以外の文献を挙げる形です。私の場合、参考文献にはページの半分弱を割きました。
ここまで第1章は3ページ構成ですが、概要と参考文献を考慮すると、実質2ページで研究計画を記載することになります。そのため、冗長さを極力排除し、本当に重要なことをいかに伝わるように書くかが求められます。
ただし、単に文字数を埋めればよいわけではありません。大量の申請書を読む審査員の視点を考えれば、計画を論点ごとに簡潔にまとめるだけでなく、「書類自体が読みやすいこと」も重要です。
例えば、項目間に適切に改行を入れる、重要な論点は文字色を変える・下線を引く、ビュレットを活用するなど、構成を工夫するとよいでしょう。審査員の視点に立って、読みやすさを意識しながら書類を作成することが大切です。
■2章「応募者の研究遂行能力及び研究環境」
では、最後に第2章について解説して終わりにしたいと思います。
この章では、「これまでの研究活動」と「研究環境」について、2ページにわたって記載します。ここでは、これまでの実績をどのように示すか、また研究環境がどれだけ整っているかを具体化することが求められます。
■これまでの研究活動
ここで課題となるのは、やはり研究業績でしょう。
私は理系大学院を修了後、一般企業に就職し、働きながらMBAを取得。その後、コンサルファームへ転職し、アカデミアへと転進しました。そのため、研究業績はどうしても不足していました。幸いにも、ちょうど国内査読誌に論文がアクセプトされたタイミングではありましたが、それでも査読誌1本(研究ノート)のみで、不安が大きかったのは事実です。
そこで、これまでの学会発表のプロシーディングや査読なしの雑誌論文など、可能な限りの業績をかき集めました。それでも合計6本でしたが、研究に関連する学会発表も合わせて記載しました。まさに藁にも縋る思いでした。
記載の際は、単に論文を列挙するのではなく、研究内容ごとに整理し、「この研究群ではこういった主張を展開した」という解説を加えました。並び順も、今回の研究計画にとって重要なものから記載するのがセオリーでしょう。
■研究環境(研究遂行に必要な研究施設・設備・研究資料等を含む)
研究環境に何を記載すべきか、最初はよくわかりませんでした。私の研究は基本的にPCがあればどこでもできるため、特別な実験装置や実験環境は必要ありません(文系の多くの研究分野も同様かと思います)。
そのため、研究遂行にふさわしい施設・設備・資料の整備状況、および経費の使い道(=どのような用途に科研費を充てるのか)を記載しました。それ以上に書くべきことは特になかったというのが正直なところです。
第2章は2ページ以内の制限がありますが、結果として半ページ以上の空白ができてしまいました。本来なら空白を埋めるべきなのですが、無理に文章を増やすと冗長になってしまうため、そのまま提出しました。研究業績が少ないこともあり、正直、採択は難しいだろうと感じていました。
■最後に
ここまで、私が書類作成の際に気をつけた点を述べてきました。思いつくままに書き連ねたため、読みにくい箇所もあるかもしれません。文章の構成が重要だと言いながら、大した構成をせずに書いてしまったことはご容赦ください。
とはいえ、大切なのは「いかにロジカルに論理展開するか」、そして「その中でいかに面白く自分の研究を語るか」ではないかと思います。結局のところ、審査員も人間です。短い審査時間の中で、ストレスなく「これは面白いかも」と感じてもらえるインパクトのある書類が、採択されやすいのではないでしょうか。
そのためには、単にロジカルな文章を書く(ソフト面の工夫)だけでなく、書類のレイアウトや構成を整え、視覚的にも読みやすくする(ハード面の工夫)ことも重要です。
ソフト面にばかり意識が向きがちですが、ハード面の工夫にも気を配ることで、より良い結果につながるのではないかと思います。ただし、これは科研費の申請書類に限った話ではなく、一般企業などでの企画書・提案書なども全く同じですね。
拙い文章ながら、何かの参考になれば幸いです。
以上
【記事】「なぜこんな決定になったのか?」—組織の“意思決定の迷宮”にハマらないために
「なぜこんな決定になったのか?」—組織の“意思決定の迷宮”にハマらないために

「この方針、誰がどうやって決めたんだ?」
会議のたびに話し合っているはずなのに、最終的に出てくる決定がどこかしっくりこない。結局、なんとなく決まったような気がする——そんな経験、ないだろうか。
会社の方針、プロジェクトの進め方、人事異動に至るまで、私たちが働く組織の意思決定は、一見すると論理的に進められているように思える。しかし、実際には偶然や場の空気、個々の利害が複雑に絡み合い、意図しない方向へ流されてしまうことが少なくない。
そこで注目されるのが「ゴミ箱モデル」という意思決定理論だ。この考え方によれば、組織の意思決定は、参加者・問題・解決策・選択機会が偶然に交差したときに生まれる。つまり、「今ここにある課題」と「たまたま使えそうな解決策」が、その場の流れで結びついた結果が意思決定となるのだ。
これは何も特別な話ではない。会議で誰かが「そういえば、以前の企画案が使えそうだ」と言い出し、気づけばその案が採用される。上司がふと口にした意見が、そのまま決定事項になる——日常の職場でもよく見られる光景ではないだろうか。
しかし、この「なんとなく決まる」プロセスが、組織のパフォーマンスにどんな影響を与えるのかについては、これまであまり深く検証されてこなかった。そこで最新の研究では、ゴミ箱モデルをマルチエージェントシミュレーションによって再現。実際の組織では何が起きているのかを徹底分析した。その結果、意外な事実が浮かび上がった。
■シミュレーションで見えた、組織の意思決定のリアル
① 小さな組織ほど、問題は「見過ごされる」
スタートアップのような小規模組織では、意思決定がスピーディーに行われるイメージがある。しかし、実際には「見過ごし(問題に気づいても誰も対応せず放置される)が多発することが分かった。
なぜか?それは、小規模組織では情報伝達の経路が少ない一方で、意思決定者が「すべてを把握できている」と思い込んでしまうからだ。リーダーが細部まで目を配っているつもりでも、実は「問題があることすら知らない」という状況が生まれる。
例えば、急成長中のベンチャー企業で、「忙しすぎて課題をリストアップする時間もない」という状況を想像してみてほしい。問題が表面化する頃には手遅れになっている——そんな事態は決して珍しくないのだ。
また大企業でも取締役会などでは少人数でコトが決まる。見方によれば、官僚制の強い企業でも小規模組織は存在するのだ。こういった組織では、「決めることよりも、決めないことが評価される」構造である場合も多く、「見過ごし」が標準装備のスキルと化し、決定なき会議が組織の日常になるのだ。
② 大きな組織ほど、「やり過ごし」が横行する
一方、規模が大きくなると、「見過ごし」は減る。代わりに増えるのが「やり過ごし(問題を認識しつつ、あえて対応せずにスルーする)」だ。
会議でのこんなシーンを思い出してほしい。
「とりあえずこの件は持ち帰りで」
「いったんこの方針で進めて、様子を見ましょう」
「ここはあえて判断しないという選択肢も……」
結局、何も決まらない。
大組織では決定権が分散しすぎており、意思決定者が「自分が決めなくても、誰かが何とかするだろう」と考えてしまいがちだ。そして結果的に、問題は先送りされ続ける。その間に現場はモヤモヤしたまま動き出せず、気づけば時間だけが過ぎていく。こうして「決定しないこと」が暗黙の了解となり、組織全体が惰性で回り続けるのだ。
③ 「できるリーダー」ほど、手を広げすぎて失敗する
よく、「優秀なリーダーは細かいことにも目を配る」と言われる。しかし、シミュレーションの結果は逆だった。
リーダーの管理範囲(手掌範囲)が広すぎると、組織のパフォーマンスはむしろ低下する。
たとえば、社長がすべての案件に口を出していたらどうなるか?
確かに、短期的には意思決定がスムーズになるかもしれない。しかし、リーダーのもとに情報が集中しすぎると、現場は「とりあえず上に確認しよう」と判断を委ねるようになる。その結果、組織全体の意思決定速度は落ち、対応すべき問題が積み上がってしまうのだ。
つまり、「何でも自分で決めるリーダー」は、長期的には「決められない組織」を作ってしまうことになる。
④ 組織構造を作れば解決する?むしろ逆効果になることも
「組織はちゃんと構造化したほうがいい」とよく言われる。しかし、シミュレーション結果を見る限り、組織構造は必ずしも意思決定をスムーズにするわけではないことが分かった。
特に、組織が大きくなるほど、階層的な構造が「ボトルネック」になり、意思決定を遅らせることがある。たとえば、組織に階層を設けることで意思決定の流れは整理される。しかし、その一方で、上層部の確認を待つ時間が長くなり、結局、期限を守れなくなるケースが増えてしまう。シミュレーションでは、この影響が特に大きく、管理範囲が広いリーダーほど、判断が滞る傾向が見られた。結果として、フラットな組織よりも、階層的な組織では意思決定の遅れによるコストが大幅に増加してしまうのだ。
つまり、階層を増やすことで「適切な管理」ができるようになるとは限らない。それどころか、過剰な構造化が「決定の遅延」を生み、意思決定のスピードを鈍らせる可能性があるのだ。
⑤ 期限超過が最も危険——「決まらないこと」が最大のリスク
最も深刻なのは、「何も決まらないまま、時間切れになる」パターンだ。
シミュレーションでは、小規模組織でリーダーの手掌範囲が広がるほど、期限超過のリスクが急上昇することが分かった。つまり、「全部自分で決める!」というリーダーは、実は組織の足を引っ張っている可能性が高い。
解決策はシンプルだ。
- 決めるべきことを明確にする
- 決まらない問題は「損切り」する
意思決定において、「決めること」だけが重要なのではない。「決めないときは、早めに決めない」こともまた、組織のパフォーマンスを大きく左右するのだ。
■意思決定を変えれば、組織は変わる
今回の研究では、ゴミ箱モデルを再検証し、意思決定がどのように組織のパフォーマンスを左右するのかを明らかにした。私たちは、「合理的なプロセスのもとで意思決定が行われている」と思いがちだ。しかし、実際には偶然や場の流れに大きく影響を受けている。
だからこそ、意思決定のプロセスを見直すことで、組織のパフォーマンスを向上させることができる。
「なぜ、この決定になったのか?」
この問いを意識するだけでも、組織の意思決定は変わる。今回の研究結果をヒントに、自分の組織の意思決定のあり方を見直してみてはいかがだろうか。
以上
※この記事は私の書いた論文内容を一般向けに広くわかりやすく記事化したものです。
文章作成にはChatGPTを利用しています。
記事化にあたり、オリジナル論文の意図を踏襲しつつも、わかりやすさのために
表現や事例を追加しています。
コスト・タイムパフォーマンス観点による組織的意思決定の分析:マルチエージェントシミュレーションを利用したActiveなゴミ箱モデルの開発
【レビュー】GLAY『Cynical』と考える新制度派組織論
・GLAY『Cynical』とは?
まずはこちらをお聞きいただきたい。
【YouTube公式】
この鮮やか、かつ爽やか、アッパーなサウンドでシニカルに世相を切っている最高な曲は、国民的ロックバンドであるGLAYが1995年に発表した楽曲である。
曲名は、その名のとおり『Cynical』。
すでに発表から30年が経過しようとしているのが驚きであるが、サウンドの新しさは最近の曲とも引けを取らない名曲だ。
GLAYファンであれば一発でわかると思うが、作詞作曲はもちろんHISASHIである。
いきなりで恐縮だが、最近「新制度派組織論」という経営組織論でも一大勢力を築いている理論をかじっているが、なかなか難解でわかりづらい。
そんな中、気分転換に曲を聴いているとふと『Cynical』の歌詞が耳に残ったわけである。
・・・これはまさに新制度派組織論的だと。
そういう訳で、『Cynical』でこの難解な理論が少しでもイメージしやすくならないか解説してみたく、この記事を書いてみた。
私自身勉強中であり、解釈や説明が適切でない部分もあるかもしれないが、どうかご容赦いただきたいし、ぜひ自分自身で学んでみてほしい。
・新制度派組織論とは?
新制度派組織論は、組織が効率性や経済性だけで動いているのではなく、社会的な「正統性」を求めている点に注目する理論であり、社会で「正しい」とされるルールや価値観、つまり「制度」が組織をどう形づくるのかを解明しようとしている。
なぜ「制度」に着目するのかと言えば、組織は、Weberの官僚制(高度に分業したヒエラルキー組織)で合理性を担保しているのではなく、世間一般にある世論や法律と言った規範的なルール(制度)に従い、社会的な「正統性」を担保していると考えるからである(上西(2014)、山田(2003)など)。
簡単に言えば、実際には大きな効果は出ていないけど、社会的な要請からSDGs(制度)への取り組みを公表すれば、「あの企業は素晴らしい」と社会的な信頼、つまり「正統性」を得ることができる。こういった制度から組織を分析する取り組みは、1970年代以降、Meyer・Rowan(1977)やDiMaggio・Powell(1983)といった研究者たちの議論から発展してきた。
このような「正統性」の議論以外にも以下のようなトピックがある。
・同型化
組織は制度から影響を受け、似たような構造や行動様式を持つようになる。例えば、ある企業が導入した働き方改革が素晴らしいと、他社にも波及する現象などがある。これは「模倣的同型化」と呼ばれ、組織が成功企業から模倣することで「正統性」を確保しようとする結果となる。
同型化の議論は他にも「強制的同型化」「規範的同型化」の議論もある(安田・高橋(2007)などがわかりやすい)。
・脱連結:表向きの正統性と実態の乖離
組織が形式的にルールを取り入れても、内部の実態がそれに従っていないことがある。この現象を「脱連結(decoupling)」という。
一見理解が難しそうだが、例えば、労働環境を改善する制度を導入したとアピールする企業が、実際には現場での過重労働を放置していたりと、簡単に言えば「本音と建て前」のようなものだ。こうした「表向きの正統性」と「内部の実態」とのギャップは、新制度派組織論の重要なテーマとなっている。
・制度ロジック多元性
同型化の議論のように、確かに同じ制度上の企業は似てくるが、すべて同じ行動を取るわけではなく、違う行動を取ることはよくあることだ。この現象を説明するため、企業は制度ロジックと呼ばれる「共通の価値観、規範、プロセス、規定など」を複数抱えていると捉える。つまり、企業は複数の制度ロジック間のコンフリクトによって異なる行動を取ると考えるのである(舟津(2019))。さらにそのコンフリクトがイノベーションの源泉にもなり得る。
例えば、病院では「市場ロジック」(効率的な収益性)と「プロフェッショナルロジック」(患者ケア重視)が矛盾することがあるが、これが患者ケアを向上させつつ、収益性を確保できるAI診断支援システムの導入につながるかもしれない。
・「Cynical」と新制度派組織論を読み解く
さて、本題である(すでに読者を置き去りにしているかもしれないが、それは私の文才のなさにあり、申し訳なさでいっぱいである)。GLAYの楽曲「Cynical」は、個人が社会や組織の中で直面する矛盾や葛藤を表現しており、新制度派組織論の視点でそのテーマを読み解ける。
ぜひサウンドを聞きながら歌詞と一緒に読んでほしい。これによって、少しでも理論のイメージが深まることを祈りたい。
1. 個人の脱連結状態
「晴れた日は苦手」が武器の メッキ張りのヒーロー 8桁の駒に愛想つかれて
冒頭の歌詞は、脱連結に重なるテーマであり、社会や組織からの「正統性」を得るために無理して個人を飾っている姿が見える。組織に属しながらも、「自分はすぐに剝がれるメッキで虚勢を張っている」という無力感や孤立感を感じている個人が表現されている。次の「データが叩き出す~」からも、社会や組織はある制度でかっちりと固められているが、自分の姿は「秘密兵器は 作り飾られた虚像」からも社会や組織に対して「正統性」を得るために造り上げた虚像だと読み取れる。
- 表向きには組織の一員として「正統性」を演じているが、メッキの内部ではそのルールや価値観に実際には共鳴していない。
2. 制度への表層的な順応
人に合わせて上手く生きる シニカルな舞台で 時には飼い主も裏切る
歌詞にある「人に合わせてうまく生きる」というフレーズは、個人が社会的ルールに従い、組織内で正統性を保ちながらも内心では疑念を抱えている状態を描写している。ここからも「形式化されたルールへの表層的な順応」と「内面的な反発」という二重性が読み取れ、それは曲を通したテーマであろう。
- 組織の外向きのルール(形式化された制度)に従いながらも、それを無意識的に疑い、心の中では納得していない。
- 新制度派組織論が指摘する「シニカルな従属」そのもの。
3. エージェンシーの芽生えと組織への抵抗
胸に秘めた起爆装置のエラーで 狂わせろ くだらないレジスタンス
「胸に秘めた起爆装置のエラー」というフレーズは、制度に従うだけではない個人の主体性や、制度そのものを変革しようとする可能性を示唆しているように思える。続く「くだらないレジスタンス」は、組織内でのささやかな抵抗や変革の試みを揶揄しつつも肯定しているように見える。しかし、組織や制度の内部の個人が、その中で小さな反抗を続けることの意義と限界が描かれている。
- 制度に埋め込まれながらも、そこから逸脱し、新しいルールや価値観を模索するエージェントとしての姿が描かれている。
- 例えば、会社員が「こうあるべき」とされる働き方に疑問を抱き、自分なりの価値観で新しい働き方を実現するような行動がこれに該当するだろう。
4. 制度的成功のむなしさ
華麗に演じたご褒美は 暗闇で輝くアクセサリー
この歌詞からは、制度に適応し、表面的な成功を収めたとしても、それが実体のない虚飾に過ぎないことを示唆しており、この「アクセサリー」は制度が提供する正統性や報酬が、内実のない形式的なものに過ぎないことを象徴しているのかもしれない。新制度派組織論でも正統性を得るために「神話」や「儀式」が利用されるとしている。
- 組織が社会的正統性を得るために儀式的なモノを取り入れることが多い。例えば、特に議論もなく決定に正統性を与えるためだけに役員会で決裁を行うことなどだ。このような「儀式化された正統性」のむなしさが、歌詞の中に込められているのではないか。
5. 制度を純粋に信じることの危うさ
信じてた「夢と現実」を 軽く笑い飛ばされる日々
前段の「ガラス細工のように 守られ続けて育った後遺症はリスクとなり」からだが、若者に対する注意喚起だろう。アイデンティティがまだ確立しておらず、いわば温室で育った若者がいざ社会に出ると、社会は本音(現実)と建て前(夢)で出来ていることをそこで初めて知ることになる。社会に揉まれ自己のアイデンティティを確立するわけだが、そこには多様な制度があり、その制度ロジック多元性からのコンフリクトを乗り越えなければならない。
- 社会や組織には複数の制度的なロジックがある。さらに実態は脱連結で必ずしも制度がそのまま運用されているわけではなく、本音と建前もある。それに早く気づいて葛藤の中で自己アイデンティティを確立することが重要だ。
6. 制度変革への期待と矛盾
「悪い大人達と作る 綺麗な嘘」に気づき始める NEXT WORLD!
「NEXT WORLD!」というフレーズは、現行の制度の限界を超えた新しい世界への期待を表現していると考えられる。しかしその一方で、「悪い大人達と作る 綺麗な嘘」という歌詞は、新しい制度もまた社会的に構築された虚構である可能性を示唆している。
- 新制度派組織論の視点から見ると、制度変革は常に矛盾を伴う。新しい制度が登場しても、それは必然的に既存の社会的文脈や力学の中で構築されるため、完全に自由で公正なものになるとは限らない。
- それでも、「NEXT WORLD!」という表現は、制度を超える変革の可能性を追い求める意志を象徴しているように思える。
・終わりに
「Cynical」は、新制度派組織論で議論される概念を象徴する楽曲ではないだろうか。解説のとおり、この歌詞には、個人が制度に埋め込まれながらも、その中でどう主体的に生きていくかという問いかけが込められていると思う。
もちろん、新制度派「組織論」であって、あくまで主体は組織と制度の関係性ではあるが、ミクロレベルの個人も分析対象ではある。現代社会や組織の中で、ただ制度に従うだけではなく、主体的に意味を見出していくことが求められる時代。この楽曲を通して、私たちは「正統性」や「制度」にどう向き合い、どのように自分自身の在り方を問い直すべきかを考えさせられるのではないだろうか。
お付き合いいただきありがとうございました。
以上
※文章作成・校正には一部ChatGPTを利用しています。